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【M&A事例】後継者不在の住宅リフォーム会社を近隣工務店へ承継したケース

2026 7/05
リフォーム業界のM&A事例
2026年6月29日2026年7月5日
地域の住宅リフォーム会社の経営者と買い手企業が承継について合意する様子

本記事は、参考資料に含まれる住宅・リフォーム・建設周辺のM&A事例傾向と、リフォーム会社M&Aの一般的な実務論点をもとに、守秘に配慮して再構成した初期モデルケースです。特定の企業、地域、取引を指すものではありません。

今回のモデルケースは、地域密着で住宅リフォームを行ってきた会社の事業承継です。譲渡企業は、創業から約30年、戸建ての水回り、内装、外装、屋根修繕、小規模改修を中心に展開してきた会社でした。大きな広告投資よりも、OB施主からの再依頼、近隣紹介、地元不動産会社からの相談で受注を積み上げてきたことが特徴です。

代表者は60代後半で、親族内に後継者はいませんでした。従業員は営業兼現場管理、事務、施工管理、職人を含めて少人数でしたが、長年付き合いのある大工、設備、電気、クロス、塗装の協力会社があり、現場は安定して回っていました。売却の目的は、単に価格を得ることではなく、従業員の雇用、OB施主への対応、協力会社との関係、屋号の継続を守ることでした。

目次

譲渡企業の状況

譲渡企業は、年間完工高が2億円台前半の住宅リフォーム会社という想定です。大型の新築工事は少なく、浴室、キッチン、トイレ、洗面、内装、外壁、屋根、給湯器、手すり設置など、地域の住まいに関わる小中規模工事を幅広く対応していました。単価は案件によってばらつきがあるものの、OB施主からの再工事が多く、粗利は比較的安定していました。

強みは、地域での信用とOB施主の厚さです。過去工事の台帳は完璧ではありませんでしたが、代表者と事務担当が顧客情報を把握しており、紹介元も複数ありました。地元不動産会社からの小修繕、管理会社からの退去後修繕、近隣施主からの紹介が継続的に発生していました。

一方で課題もありました。代表者が現調、見積、最終値決め、主要顧客対応に深く関わっており、代表が抜けると紹介元との関係が弱くなる可能性がありました。また、案件台帳は表計算ソフトと紙資料が混在し、保証履歴やアフター対応の記録も担当者ごとに残っている状態でした。買い手にとっては、強みと属人性が表裏一体でした。

財務面では黒字でしたが、役員報酬や家族従業員の関与、車両費、広告費、修繕費の処理など、通常の決算書だけでは実態利益が見えにくい部分がありました。そのため、M&A検討の初期段階では、決算書の数字をそのまま見せるのではなく、正常収益力を整理する必要がありました。

買い手企業の狙い

買い手候補となったのは、同じ県内で注文住宅と小規模リフォームを手掛ける地域工務店という想定です。新築需要の先細りを感じており、OB施主向けリフォーム、リノベーション、メンテナンス事業を強化したいと考えていました。自社にも現場管理機能はありましたが、リフォーム専任の顧客基盤と協力会社網を一から作るには時間がかかる状況でした。

買い手にとって、譲渡企業の魅力は、地域のOB施主、紹介元、リフォームの現場対応力でした。特に、代表者の人柄で築かれた信用、迅速な小工事対応、地元不動産会社との関係は、短期間では作れない資産です。買い手は、譲渡企業の屋号と顧客対応スタイルを一定期間残しながら、自社の管理体制を加える方針を検討しました。

ただし、買い手は慎重でした。代表者依存がどの程度あるのか、主要な協力会社は継続するのか、OB施主は買い手に引き継げるのか、保証対応の未整理リスクはないかを確認したいと考えました。売上が魅力的でも、承継後に職人や顧客が離れれば意味がありません。

このケースでは、価格だけでなく、引き継ぎ期間、代表者の残り方、従業員の処遇、屋号の扱い、協力会社への説明順序が交渉の中心になりました。リフォーム会社のM&Aらしく、財務条件と現場承継条件をセットで詰める必要がありました。

初期整理で行ったこと

最初に行ったのは、案件と顧客の棚卸しです。直近3期の決算書、月別完工高、施工領域別売上、案件別粗利、受注残、OB施主の件数、紹介元の概要を整理しました。個人顧客名や具体的な住所は初期段階では伏せ、エリア、工事内容、再受注履歴、平均単価を集計しました。

次に、協力会社一覧を整理しました。大工、設備、電気、クロス、塗装、防水、足場など、どの職種をどの協力会社に依頼しているか、年間の発注額、支払い条件、代表者との関係、現場監督との関係を確認しました。主要協力会社が買い手にとっても継続可能かを見極めるためです。

保証・アフター履歴も確認しました。過去に発生したクレーム、是正対応、メーカー保証、自社保証、リフォーム瑕疵保険の有無を整理しました。保証中の案件があること自体は問題ではありませんが、買い手がどこまで責任を引き継ぐかを明確にする必要がありました。

さらに、代表者がどの業務に関わっているかを分解しました。現調、見積、値決め、顧客説明、職人手配、完工確認、請求、アフター対応のどこに代表者が必要なのかを確認したところ、紹介元対応と値決めに代表者依存が強いことが分かりました。この点を踏まえ、一定期間の引き継ぎ関与を条件にしました。

候補先への共有と情報管理

このケースでは、近隣の同業に情報が広がることが最大の不安でした。譲渡企業は地域での評判を大切にしており、従業員や協力会社に先に知られることを避けたいと考えていました。そのため、候補先の選定では、譲渡企業が避けたい会社を明確にし、打診先を絞りました。

最初の打診では、社名、正確な所在地、主要顧客名、協力会社名は伏せました。「県内で住宅リフォームを展開」「OB施主と紹介元が強い」「後継者不在による承継検討」といった粒度で候補先資料を作成しました。買い手が関心を示した後に条件整理を締結し、段階的に詳細資料を共有しました。

買い手が近隣工務店であったため、商圏の重なりには注意しました。候補先に出す情報は、譲渡企業代表の承諾を得てから広げました。特に、管理会社名、主要紹介元、協力会社名は、面談が進み、本気度が確認できた段階まで伏せました。

情報管理のポイントは、単に条件整理を締結することではありません。誰に、いつ、どの資料を、どの粒度で見せるかを決めることです。このケースでは、候補先を絞り、譲渡企業主導で共有範囲を決めたことで、情報拡散リスクを抑えながら交渉を進めることができました。

交渉で重視された条件

交渉で最も重視されたのは、従業員の雇用継続でした。譲渡企業代表は、長年一緒に働いてきた従業員が安心して残れることを強く望んでいました。買い手も、リフォーム事業を継続するうえで従業員の経験が必要だと理解していたため、雇用条件の大幅な変更を避ける方向で調整しました。

次に、屋号の扱いが論点になりました。地域で知られた屋号をすぐに変えると、OB施主や紹介元が不安になる可能性があります。そのため、一定期間は既存屋号を残し、買い手企業のグループであることを段階的に案内する方針を取りました。電話番号や問い合わせ窓口も急に変えず、顧客対応の継続性を優先しました。

代表者の引き継ぎ期間も重要でした。代表者は成約後すぐに完全引退するのではなく、一定期間、主要顧客、紹介元、協力会社への挨拶に同行することになりました。買い手にとっては、代表者の信用を橋渡ししてもらえることが大きな安心材料になりました。

価格条件については、単純な利益倍率だけではなく、受注残、OB施主基盤、協力会社網、引き継ぎ支援の内容を踏まえて協議しました。譲渡企業は最高額だけを求めるのではなく、会社を残せる相手かどうかを重視しました。結果として、価格と承継条件のバランスが取れた形で合意に向かいました。

成約後の引き継ぎ

成約後は、まず従業員への説明を行いました。譲渡企業代表と買い手代表が同席し、雇用継続、担当業務、屋号、今後の体制を説明しました。従業員が不安を感じやすい給与や休日、現場の進め方についても、できるだけ具体的に伝えました。

次に、主要協力会社への説明を行いました。大工、設備、電気、クロス、塗装など、売上や現場運営への影響が大きい協力会社から順に面談しました。支払い条件を急に変えないこと、既存案件を継続すること、買い手側の担当者を明確にすることを伝え、関係維持を図りました。

OB施主や紹介元への案内は段階的に行いました。工事中の顧客、保証対応中の顧客、主要紹介元、管理会社を優先し、必要に応じて譲渡企業代表が同席しました。顧客に対しては、会社の対応体制が継続すること、保証やアフター窓口が明確であることを伝えました。

買い手は、譲渡企業会社の良さを残しながら、自社の管理体制を少しずつ入れていきました。いきなりシステムや書式を変えるのではなく、案件台帳、原価管理、写真管理、保証履歴の整理から始めました。現場に負担をかけすぎないことが、成約後の引き継ぎ成功のポイントでした。

この事例から学べること

このモデルケースから分かるのは、地域密着の住宅リフォーム会社では、価格だけでなく承継設計が重要だということです。OB施主、紹介元、協力会社、従業員、屋号をどう守るかが、譲渡企業にとっても買い手にとっても大きな論点になります。

後継者不在であっても、会社に価値がないわけではありません。むしろ、長年積み上げた地域の信用、顧客基盤、現場運営の仕組みは、買い手にとって魅力的な資産です。ただし、それを買い手候補に伝わる資料へ整理し、引き継げる形にする必要があります。

売却を検討する経営者様は、まず案件台帳、OB施主、紹介元、協力会社、保証履歴を棚卸ししてみてください。そこに、自社が地域で選ばれてきた理由が見えてきます。リフォームM&A総合センターでは、譲渡企業様から成功報酬を含めて費用をいただかず、こうした初期整理からご相談いただけます。

もし準備が遅れていたら起きた可能性があること

このケースでは、早い段階で案件台帳、OB施主、紹介元、協力会社を整理したため、買い手の不安を減らすことができました。もし準備が遅れていた場合、候補先面談で「代表者がいなくなったら売上が残るのか」「協力会社は本当に続くのか」「保証対応は誰が見るのか」という質問に答えられず、条件が下がる可能性がありました。

また、従業員や協力会社への説明順序を決めていなければ、成約後に噂が先行したかもしれません。地域のリフォーム会社では、従業員、職人、管理会社、顧客の距離が近いため、ひとつの不安がすぐに広がります。M&Aそのものよりも、説明不足が不信感につながることがあります。

資料整理は、会社を売るためだけの作業ではありません。会社を守るための作業でもあります。自社の強みと課題を見える化しておけば、買い手との交渉だけでなく、従業員や協力会社への説明にも一貫性が出ます。結果として、成約後の現場も安定しやすくなります。

同じような会社が検討する際のポイント

後継者不在の住宅リフォーム会社が売却を検討する場合、最初に確認すべきは「誰に何を残したいか」です。従業員、屋号、OB施主、協力会社、地域の評判、代表者の引退時期、手取り額など、すべてを同じ重さで守ることは難しい場合があります。優先順位を決めることで、候補先の選び方も明確になります。

次に、近隣同業へ出す情報を慎重に設計します。同業は事業理解が早い一方、情報漏えいの不安もあります。候補先を広げすぎず、譲渡企業が承諾した相手にだけ、段階的に情報を出すことが大切です。特に、顧客名、管理会社名、協力会社名は初期段階で出すべきではありません。

最後に、代表者の引き継ぎ期間を現実的に考えることです。地域で長年信頼を築いた会社ほど、数週間で関係を移すことは難しいものです。主要顧客、紹介元、協力会社への挨拶をどの順番で行うか、代表者がどこまで同行するかを決めておくと、買い手も安心して条件を出しやすくなります。

地域密着の会社で評価される「普段の対応」

地域密着の住宅リフォーム会社では、派手な大型案件だけが評価されるわけではありません。むしろ、雨漏りの初動、建具の不具合、給湯器交換、クロス補修、手すり設置、介護改修など、OB施主から日常的に頼られている対応が大きな価値になります。買い手にとっては、広告費をかけて新規顧客を獲得するよりも、信頼関係のあるOB施主基盤を引き継げることが魅力です。

このケースでも、譲渡企業は大型改修だけでなく、小さな修繕依頼を丁寧に受けていました。単価だけを見ると非効率に見える案件もありますが、そこから水回り改修、外装工事、間取り変更につながることがあります。地域の方から「困ったらあの会社」と思われている状態は、決算書の売上以上に大切な資産です。

買い手にその価値を伝えるには、OB施主の件数、再依頼率、紹介件数、相談内容の傾向を整理しておくことが有効です。個人名を整理した集計でも、地域に根付いた会社であることは十分に伝わります。売却を検討する段階から、日々の小さな対応履歴を残しておくことが、将来の承継条件を良くする準備になります。

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